
「ホームレスみんなハゲだっつうの」
朝8時台の情報番組で、こんな言葉が流れた。10月22日のことだ。
朝ごはんを食べながら、通勤の支度をしながら耳にした人もいたと思う。
わたしはあとからニュースで知って、思わず「おいおい」と声が出た。
発言したのは、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)のコメンテーターで、元テレビ朝日社員の玉川徹。
しかも、玉川氏が番組で頭を下げるのはこれが初めてじゃないんですよね。
薄毛特集で飛び出した「汚い生活」発言
この日の番組は、秋に増える抜け毛の特集だった。
夏のダメージや寒暖差、乾燥で抜け毛が増えるという、わりと身近なテーマ。
玉川氏は「僕は科学の子だからね」と前置きして、薄毛に悩む男性に「いいから病院行けと」と語った。
ここまでは、うなずく人もいるかもしれない。
問題はその先。
「生活習慣とかで変わるものだったら、ホームレスみんなハゲだっつうのって言うんですよ」「あんだけ汚い生活してて、フサフサな人いるじゃないですか」。
フリーアナウンサーの羽鳥慎一さんが髪を洗う頻度にふれると、「頻度なんかほぼないでしょ」とも続けた。
番組の終わりぎわ、玉川氏は「ホームレスの方々に対して大変不適切な表現がありました。反省しております」と深く頭を下げた。
その日のうちに謝ったことは、きちんと評価したい。
でもね、正直こうも思ったんですよ。謝るような言葉が、なぜ最初に口から出てしまうのか、と。
国葬「電通」発言からユダヤ人発言まで
振り返ってみると、玉川氏の「おわびの歴史」はけっこう長い。
2022年9月28日、安倍晋三元首相の国葬で菅義偉前首相が読んだ弔辞について、「当然、これは電通が入ってますからね」と発言。
翌日に事実ではなかったと謝罪し、テレビ朝日から出勤停止10日の処分を受けた。
番組に戻ったとき、本人は「現場に足を運び取材をし事実確認をして報告する、その基本にもう一度立ち返る」と話していた。
ところが2026年4月10日。ドナルド・トランプ米大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏について「ましてやユダヤ人ですよね」「むしろいないほうがいいような人のような気もする」という趣旨の発言をした。
駐日イスラエル大使のギラッド・コーヘン氏がテレ朝に懸念を伝える書簡を送り、局が謝罪する事態に。
一歩まちがえば外交問題ですよ、これ。
「差別の意図はない」で終わる話なのか
気になるのは、毎回どこか似た形になっていること。
自分の主張を強めるために、ある人たちをひとくくりにして持ち出す。クシュナー氏のときは「ユダヤ人」、今回は「ホームレス」だった。
テレ朝の西新社長は4月の会見で「差別的な意図は全くなかった」と説明している。今回もたぶん、悪気はなかったんだと思う。
ただ、悪気なく自然に出てくる言葉だからこそ言われた側にはずっしり重く響く。その想像力が少し足りなかったんじゃないかな。
テレ朝の対応にも首をかしげたくなる。4月の件では、最初は取材に「人種差別との指摘には当たらない」と答えて、2日後に一転して謝罪。
番組サイトの謝罪文には玉川氏の名前も発言の中身も書かれていなかった。
よそのタレントの失言なら、ワイドショーは何日も取り上げるのに。
身内の話になると急に口数が減るなら、それってちょっとずるくない?
ホームレスは「別の世界の人」じゃない
今回わたしがいちばん引っかかったのはここだった。
路上で暮らす人の多くは、最初からそうだったわけじゃない。仕事を失ったり、病気になったり、家族とうまくいかなくなったり。きっかけは案外どこにでも転がっている。
物価は上がるのに、給料はなかなか追いつかない。
中間層のわたしたちにとっても、まったくの他人事とは言いきれない時代ですよね。
そんな人たちを、薄毛トークの「たとえ」に使ってしまう。それも朝の公共電波で。
SNSでは「何回失言するの」「いつも口だけ、反省しないから繰り返す」といった声が上がっていると報じられている。
きびしいけど、そう言いたくなる気持ちはわかる。
その一方で、番組は同じ時間帯の情報番組のなかでもトップクラスの視聴率だという。局としては手放しにくいんだろうね。
歯に衣着せぬコメントを求める視聴者がいるのもわかる。
わたしも、テレビがきれいごとばかりになるのはつまらない派。
でも、遠慮なくものを言うことと、弱い立場の人を雑に扱うことは、まったくの別物。
次にあの「深くおわび申し上げます」を聞いたとき、わたしたちはそれをどこまで信じられるだろうか。

