
「え、何それ」
国会の予算委員会で、この言葉が3回も飛び出したらしい。
カフェで友だちが言うならわかる。でも舞台は参議院の予算委員会。国のお金の使い道を決める、いわば日本の「家計会議」なんですよ。
19日の参議院予算委員会で、いのちの党の奥田ふみよ議員が、令和8年熊本地震の被災地支援をめぐって質問に立った。答弁のたびに「何それ」とこぼし、最後は小泉進次郎防衛大臣からチクリと返されたと報じられている。
被災地を思う気持ちは、わたしも同じ。だからこそ思う。もったいなかったよね、この質疑。
「何それ」3連発 委員会で何があったのか
まずは流れを整理しておこう。
奥田氏は、住めなくなった家が多いとして、建て替え支援が必要だと訴えた。内閣府の横山防災担当政策統括官の答弁は、支援金は全壊で最大300万円、中規模半壊で最大100万円、半壊以下は対象外というもの。ここで1回目の「え〜、何それ」が出た。
奥田氏は「最大たった300万円で足りるわけがない」と主張。建て替えに最大3000万円、一部損壊でも最大1000万円のリフォーム支援を求め、住宅再建だけで9000億円を補正予算に入れるよう高市総理に迫った。
これに対して細野豪志防災担当大臣は、「元々私有財産への支援」であり「現状での予算化は非常に難しい」と退けている。
次は自衛隊の給水・入浴支援。防衛省統合幕僚監部の小杉総括官が、熊本県知事からの撤収要請を受けて9月13日で終了したと説明すると、2回目の「え、何それ」。
最後は避難所になる学校の体育館の冷暖房だ。文部科学省によると冷房の設置率は33.1%で、100%にする目標は令和13年度中。暖房にいたっては目標すらない。ここで3回目の「え、何それですよ」が飛び出した。
小泉大臣が立ったのは「自衛隊の名誉」のため
いちばんの見せ場は、自衛隊のくだりだった。
奥田氏が入浴支援の拡充を高市総理に求めると、小泉大臣が自ら答弁席へ。「ちょっと自衛隊の名誉に関わりますので」と切り出した。
委員会室からは「そうだ」の声。小泉氏は「今の『何それ』って言いたいことが目的かもしれませんけども」とチクリ。そのうえで、災害派遣も撤収も自治体の要請にもとづくと説明し、「あたかもそうではないかのように訴えるのはやめていただきたい」と述べた。
正直、「おっ」と思った。
自衛隊は、自分の判断で勝手に来て勝手に帰る組織じゃない。知事に頼まれて入り、頼まれて引き揚げる。勝手に動かないことこそが、力を持つ組織への信頼の土台なんだよね。
それなのに「やめちゃったんですか?」と言われたら、現場で汗をかいた隊員はどう感じるだろう。お風呂に入れてホッとした被災者も、きっと多かったはず。
撤収が早すぎたと思うなら、まず問うべきは撤収を求めた側の判断のほう。矛先、ちょっとずれてない?
主張に一理はある でもお金の話が大ざっぱすぎる
じゃあ奥田氏の質問が全部ダメかというと、わたしはそうは思わない。
体育館の冷房は3割ちょっと。夏の避難所は命に関わる暑さになるし、冬の底冷えもきつい。暖房の目標がないと聞いて、「え?」と思った人も多いんじゃないでしょうか。ここは政府がツッコまれて当然の部分です。
「現場の水は全然足りていない」という訴えも、本当なら放っておけない。ただ、それを自衛隊が担うのか、自治体や国が別の方法で補うのかは、分けて考えたいところ。
引っかかるのは、お金の話の大ざっぱさなんですよ。
全壊に最大3000万円。一部損壊にも最大1000万円。気持ちはわかる。でもそのお金は、結局わたしたちの税金か、国の借金になる。
コツコツ地震保険に入って備えてきた人との公平さはどうなるのか、という問題もある。細野大臣の「私有財産への支援」という説明は冷たく聞こえるけど、こうした線引きの難しさを含んでいるんだと思う。
冷暖房の財源として、次世代革新炉やフュージョンエネルギーへの投資8.1兆円を回せ、という主張も気になった。フュージョンは核融合のこと。エネルギーは電気代にも安全保障にも直結するテーマだ。
電気代が上がれば、家計も町工場も苦しくなる。体育館のエアコンだって、動かすには電気がいる。将来の電源への投資を削ってエアコンを買うのは、冷蔵庫を買うために発電所を止めるような話に聞こえてしまう。
「何それ」の先に聞きたかったもの
国会で政府を厳しく問いただすこと自体は、わたしは大歓迎。与党でも野党でも、おかしな点はどんどん突いてほしい。
でも、驚いてみせるだけなら、SNSの切り抜き動画で足りちゃうんですよね。
被災地の人が国会に望むのは、たぶんリアクションじゃない。いつまでに、いくらで、どこからお金を持ってきて、何を変えるのか。その道筋だと思う。
小泉大臣の言葉尻をとらえた一言は、少し皮肉が強かったかもしれない。それでも、隊員の名誉のために自ら立ったのは、大臣として筋が通っていた気がする。
熊本の復興はまだまだこれから。次にあの委員会室で聞きたいのは「何それ」じゃなくて、「それならこうしよう」の方なんだよね。


