
採決のその瞬間、席にいない。
会社でいえば、みんなで決めた方針の最終決裁で、ハンコを押さずに帰っちゃうようなもの。
それが国会で起きたんですよ。
6日、飲食料品の消費税を下げる関連法案が衆院本会議で可決された。
その採決で、自民党の議員4人が途中で席を立ったと報じられている。
しかも、そのうちの1人はついこの間まで総理大臣だった人。
ニュースを見て、思わず「おいおい」と声が出た。
退席した4人は誰で なぜ席を立ったのか
退席したのは、石破茂前首相、小渕優子元選対委員長、古川禎久元法相、船田元・元経済企画庁長官の4人。
産経新聞によると、この4人は今年8月、党の税制調査会と社会保障制度調査会の合同会議などで、そろって反対を唱えていた。
小渕氏は採決のあと、「財源をはじめ、さまざまな懸念が払拭されていない」と記者団に話した。
党税調の「インナー」と呼ばれる非公式の幹部会合のメンバーも辞めている。
船田氏は「減税しても食料品価格が確実に下がる効果が期待できない。大変残念だが棄権した」。
石破氏は8月3日の合同会議のあと、「日本の将来に責任が持てない」と話していた。10月19日のBS-TBSの番組でも「本当に下がるのか。何のための減税か訳が分からなくなる」と語っている。
古川氏は、小野寺五典税調会長に反対の意見書を出した。「財源の見通しも立たないまま決定すれば、市場からの信認を失う」という中身だ。
流れも整理しておこう。
政府は8月5日に減税方針を閣議決定(内閣としての正式な決定)し、10月9日には法案を閣議決定して国会に出していた。
反対意見はアリ でも採決から逃げるのは別の話
ここは公平に言っておきたい。
4人の心配そのものは、的外れだとは思わない。
財源はどうするのか。店のレジで本当に安くなるのか。
一度下げた税率を戻せるのか。
家計を預かる身としても、正直気になるところなんですよね。
ただ、それを言う場所は党内の議論だったはず。
実際に4人は、8月の会議で反対を唱えている。
意見を言う機会は、ちゃんとあったわけです。
党議拘束とは、党で決めた方針どおりに所属議員が投票するという約束ごとのこと。
小林鷹之政調会長は記者に問われ、党議拘束の意味は非常に重いと強調した。政調審議会や総務会を経て党として決めた法案なのに、賛否の判断に加わらないなら非常に遺憾だ、という認識も示している。
記者からは、中身に納得できなかったと説明する退席議員もいると質問が出た。小林氏の答えは、議論のプロセスに問題はなかった、というもの。
議論で負けたら、本番で席を立つ。
それ、通っちゃうの?
反対なら、堂々と反対票を入れる道もあった。
賛成でも反対でもなく、ただいなくなる。
わたしには、いちばん責任の見えにくい選び方に映った。
家計の話を党内の駆け引きにしないでほしい
食料品の消費税は、毎日の買い物にそのまま響く。米に野菜、子どものお弁当の材料。中間層の家庭ほど、レジでの数百円がじわじわ効いてくる。
だからこそ、財源の話は大事。
国の財政への信頼が揺らげば、金利や円の値打ちにはね返ってくる。古川氏の「市場からの信認」という指摘は、まさにそこを突いていると思う。
でも、心配があるならなおさら、採決で「反対」と示して理由を説明するのが筋じゃないかな。退席では、有権者は「で、この人は結局どっちなの?」と判断のしようがないんですよ。
総理経験者がそれをやった重さも、うーん、気になる。
党の方針をいちばん近くで背負ってきた人が、決まったあとのルールから外れる。若手の議員に、どんなメッセージとして届くんだろうか。
処分はどうなる 有権者が見ているのはそこ
小林氏の発言は、個別の事実関係は具体的に把握していないと断ったうえでのものだった。処分の必要性を問われても踏み込まず、事実関係をしっかり確認する姿勢を示している。つまり、処分はまだ何も決まっていない。
わたしとしては、なあなあで済ませてほしくない。
厳しい人なら、除籍や次の選挙での公認見送りまで求めるかもしれない。
その気持ち、よくわかる。
ルールを守った議員と守らなかった議員が、同じ扱い。それでは党議拘束という言葉が空っぽになってしまう。次の選挙での公認の扱いも含めて、重い判断を選択肢から外さないでほしい、とわたしは思う。
もちろん、退席した側の言い分も聞きたい。どこに反対で、なぜ反対票ではなく退席だったのか。その説明があってはじめて、有権者は判断できるから。
決めたことを守れない組織を、わたしたちは信じられるだろうか。
答え合わせをするのは、結局、次の投票所に立つわたしたちなのかもしれない。

