
1回あたり、ざっと600万円。
仙台市の郡和子市長がこの3年間に使った海外出張費を、回数で割るとこうなる。単純計算だけどね。
わが家なんて、家族旅行の予算をコツコツ貯めてやっと1回。桁がちがいすぎて思わず笑ってしまった。
市は10月23日、市長の海外出張費の内訳と成果をホームページで公開した。
ここまでは「お、やるじゃん」と思ったんですよ。
引っかかったのは、そのあとの市長の言葉のほうだった。
3年で7カ国11回 総額6672万円の中身
FNNの報道によると、郡市長は2023年度から2025年度の3年間で、7カ国に計11回出張している。目的は国際会議への出席や観光のPRなど。
同行した職員の分も合わせた経費は、総額6672万円。
旅費や通訳代も含まれていて、これまでは公開されていなかった。
火がついたのは、10月8日に閉会した9月の市議会だ。伊藤優太市議が、2025年のパリ出張を例に挙げて指摘した。
「4月のパリ出張は600万円を超える、10月のパリ出張は700万円を超えています。市民から見れば高すぎるのではないか」
公開された内訳を見ると、2025年10月のパリ出張は市長を含む5人で総額729万6722円。航空費が5人分で212万円、車の借り上げが106万7640円。Wi-Fiなどの通信料6万1747円まで、1円単位で並んでいる。
飛行機はビジネスクラス。市は「規定上はファーストクラスも使えるが、ほかの政令市(国が指定した大都市)の状況をふまえてビジネスクラスにしている」と説明したそうだ。
「心を痛めていた」って誰の心の話?
市長は定例会見で、「高すぎる」という指摘への心境をこう語った。
「私自身はこれまで疑念が持たれるような形で出張に出ているということはなかったので、高すぎるとの指摘に、非常にある意味心を痛めていました」
……うーん。気持ちはわかる。でも、そこじゃないんだよな。
聞きたいんですよ市民は。その700万円で仙台に何が返ってきたのかを。
10月27日の会見でも、市長は「色んなご指摘もあったかもしれませんけれど、適切に適正に視察が行われていると申し上げたい」と述べたと報じられている。
「かもしれませんけれど」。この言い回し、どこか人ごとに聞こえませんか?
指摘したのは議会でその向こうには税金を払う市民がいる。「あったかもしれない」で流すには、ちょっと重い話だよね。
報道で紹介された議会での答弁も、市長本人ではなく政策調整課長によるものだった。
「プレゼンス(存在感)の向上」「誘客の足がかり」。言葉はきれいだけど、ふわっとしていて数字がない。
1円単位の公開は前進 知りたいのは元が取れたか
フェアに言うと、評価できる点もちゃんとある。
これまで出していなかった経費を、日程や成果とセットで1円単位まで公開した。ファーストクラスを使える規定があっても、ビジネスクラスにとどめている。今後の出張でも公開を続けるという。
ここは素直に「前進」でいいと思う。
市長が挙げた成果にも中身はある。国際的な大規模イベントの開催に、タイや香港との新しい路線の就航。インバウンド(訪日客)や投資を呼び込むのは、地方の大都市にとって生き残りをかけた勝負でもある。
トップが海外で顔を売るのは、会社でいえば社長の営業みたいなもの。わたしも「行くな」とは思わない。
ただ、民間なら必ず聞かれますよね。「で、いくら売れたの?」って。
新しい路線で何人が仙台に来たのか。地元にいくらお金が落ちたのか。5人の同行は本当に必要だったのか。
車の借り上げに106万円かかったのは、現地の相場として妥当なのか。
ここが見えないうちは、どんなに丁寧な内訳も「明細つきのレシート」止まり。
国際都市をめざすなら説明も一流で
郡市長は旧民主党などで衆議院議員を4期務め、2017年から仙台市長を務めている。国の内閣府大臣政務官として行政改革を担当した経験もある人だ。
だからこそ、ムダを問われたときの答え方は、誰よりわかっているはずだと思う。これは政党の話じゃない。税金を預かる側の姿勢の話です。
物価は上がり税金も社会保険料も重い。そんな毎日を送る市民にとって、6672万円は「必要な経費です」で飲みこめる数字じゃない。
わたしがモヤモヤしているのは、出張そのものより説明の温度なんだよな。
11月には、観光PRのためにアメリカ・カリフォルニア州への出張が予定されているという。
帰ってきたら、こんどは「心」じゃなく「数字」で語ってほしい。
市民が「行ってくれてよかった」と思えたら、それがいちばんの成果じゃないかな。
ところであなたの町の首長の出張費、いくらか知っていますか?

