
朝6時すぎの道頓堀川で53歳の男性が川の中から大声で叫んでいた。
酔って歌っていたらいきなり担がれて投げ込まれたという。
ゾッとしたよ、正直。
大阪府警南署は10月16日、殺人未遂の疑いで15〜23歳の男女5人を逮捕した。うち2人は高校生だ。
5人の認否は、まだ明らかにされていない。それでも、このニュースを見たとき思わず声が出たわ。
早朝の遊歩道でいったい何があったのか
まず、報じられている事実を整理しておきたい。
逮捕容疑は、10月16日午前6時10分ごろ。大阪市中央区心斎橋筋の道頓堀川の遊歩道で、5人が共謀して男性の体を担ぎ川に投げ込んだというもの。
通行人から「川の中で男性が大声で叫んでいる」と119番があり署員らが男性を救い出した。
男性は低体温症で入院したものの、意識はあり命に別条はないそうだ。本当によかった。
男性は「遊歩道で歌っていたところ、容疑者らに絡まれて川に投げられた」と話しているという。
5人は現場から逃げたが、午前7時半ごろ、近くの店舗周辺で身柄を確保された。
逮捕されたのは、大阪市城東区の自営業、中江愛斗容疑者(23)と、奈良市の無職、保科玲央容疑者(20)、それに15〜17歳の少年ら3人。5人は友人関係とみられている。
ケンカじゃなく殺人未遂という罪の重み
わたしがまず引っかかったのは罪名。
傷害でも暴行でもなく警察は最初から「殺人未遂」の疑いで逮捕している。
早朝の川に酔った人を担いで放り込む。泳げるかどうかも水の冷たさもおかまいなし。
「死ぬかもしれない」と分かりそうなことを、複数人でやった疑いがある。警察が重く見たのもうなずける気がする。
ネットでは、中江容疑者について「5月にも強盗がらみで捕まっていた」という声が広がっている。
たしかに2026年5月、警視庁が強盗予備の疑いで「中江愛斗容疑者(22)」を逮捕したと共同通信が報じていた。
ただ、今回の容疑者と同じ人物なのか、大手メディアがはっきり伝えた報道を、わたしはまだ確認できていない。ここは冷静でいたいところです。
「どうせ実刑だろ」という声も見かけた。気持ちは分かる。
でも、5人のうち3人は少年。少年事件は原則として家庭裁判所に送られ、大人とは違う手続きになる。処分がどうなるかは、まだ誰にも分からないんですよね。
人を「ネタ」にする感覚はどこから来たのか
いちばん怖いのは動機がまだ見えないこと。
警察は男性と5人の間に何らかのトラブルがあったとみて調べているという。とはいえ、どんな理由があっても人を川に投げていい理屈なんてないよね。
わたしが首をかしげるのは、「その後」を想像する力の弱さ。
顔も名前も、ネットで一瞬で広まる時代。親にも学校にも迷惑がかかる。少し考えれば分かりそうなものなのにそのブレーキが利かなかったのだろうか。
よく言われるのが、「大人が叱らなくなった」という話。学校も家庭も、叱ることに臆病になった面はあるかもしれない。
体罰はもちろんダメ。でも、「ダメなものはダメ」と真正面から伝える大人が減ったのならそれは見過ごせない気がする。
もうひとつ、闇バイト事件でも感じた怖さがある。仲間うちのノリや空気が善悪の判断より優先されてしまうこと。
1人なら踏みとどまれても、5人いると「誰かが止めるだろう」で誰も止めない。集団の怖さって、まさにそこなんですよ。
酔って歌う人が狙われる街でいいのか
この事件ひとごとじゃないと思う。
仕事帰りに一杯ひっかけて、気分よく鼻歌まじりで帰る。40代のわたしにも身に覚えがある光景だ。
それが、たまたま居合わせた若者の気分ひとつで命がけになる。おいおい、そんな街を誰が安心して歩けるだろうか。
ミナミは、外国人観光客でにぎわう大阪の顔でもある。治安への不安が広がれば、客足にもそこで働く人たちの暮らしにも響きかねない。
街の安全は、警察の見回りだけで守れるものじゃない。
今回、男性の叫び声に気づいて通報した通行人がいた。その1本の電話の重みは、きっと大きかったはず。
見て見ぬふりをしない大人がいれば救える命がある。それなら子どもに「ダメなものはダメ」と言える大人がいれば、防げる事件もあるんじゃないかな。
罰を重くすれば済む話でもない。かといって、「若いから」で甘く済ませていい話でもない。
厳しさとやさしさ、その両方をわたしたち大人はちゃんと持てているだろうか。
まだ水の冷たさが残る道頓堀川がそう問いかけている気がした。


