カープ 3-2 巨人
40イニング無失点……
カープファンにとって永遠のようなあまりにも長いゼロの時間。
レフトスタンドを染めるカープファンの胸に、重苦しい雲がかかっていた。
でも、野球の神様は見捨てなかった。6回、1番中村奨成の強烈なスイングが、すべてを変えた。
「カーン!」という乾いた音が東京ドームに響いた瞬間、時が止まった。直球をとらえた打球は、まるで溜まっていた想いを吐き出すように、左翼スタンドに突き刺さった。
チームにとって41イニングぶりの得点。中村奨成が放った4号ソロホームランは、単なる同点弾じゃない。カープの魂を呼び覚ます、希望の一撃だった。
5回まで1安打の苦行から生まれた奇跡
巨人先発の赤星に封じ込められ、5回まではたったの1安打。こんな展開、カープファンなら何度も見てきた光景だろう。
でもね、こういう時こそカープらしさが光る。諦めない心、粘り強さ、それがカープの真骨頂。
1点を追う6回1アウト、打席に立った中村奨成の顔つきが違っていた。甘い直球を見逃すような男じゃない。思い切りよく振り抜いたバットから生まれた弾道は、まるで閉ざされた扉をこじ開けるように、スタンドに届いた。
40イニングという長い沈黙を破る、魂の一撃だった。
だが、野球は最後まで分からない。同点で迎えた8回、またもピンチが訪れる。森浦が1アウト満塁の絶体絶命を招き、増田陸の内野安打で勝ち越し点を献上してしまった。新井監督のリクエストも覆らず、東京ドームの空気がふたたび重くなった。
菊池涼介 ベテランの意地が炸裂した9回
1-2で迎えた9回、カープの底力が爆発した。1アウト満塁という最高の舞台で、菊池涼介が立ち上がった。35歳のベテランが放ったセンター前逆転タイムリーは、まさに経験と技術の結晶だった。
「やっぱり頼りになりますね」と新井監督が語った通り、チームが最も苦しい時に、最高のパフォーマンスを見せてくれた。
この一打に込められた想いを考えてみてほしい。長いプロ生活で培った技術、チームへの愛情、そして何より勝利への執念すべてが詰まった一振りだった。菊池のバットから生まれた打球は、逆転だけではなくカープファンの心にも希望を運んできた。
試合後の新井監督のコメントが印象的だった。「特にキク!本当によく打った」。
この言葉からは、選手への深い信頼と愛情が伝わってくる。「ああいう最高の場面でチームを救うヒットを打ってくれて、本当に頼りになるベテランだと思います」——これこそが、カープが築き上げてきた絆の証だ。
この試合、投手陣も素晴らしかった。佐藤柳之介は2試合目の先発で5回6安打1失点。プロ2年目とは思えない堂々とした投球を見せた。
そして何より、3連戦で合計3失点という投手陣の踏ん張りがあったからこそ、この逆転劇が生まれた。
「先発もブルペンもみんな頑張ってくれている」と新井監督が語った通り、チーム一丸となった戦いがあった。
ちょっとクスッと笑えたのが、新井監督のコメントだ。解説を務めた山本浩二さんに向けて「浩二さんありがとうございます」とカメラ目線でメッセージ。
中村奨成が浩二さん解説の試合でホームランを打つジンクスを意識した、茶目っ気たっぷりのひと言だった。こんな余裕こそが、チームの良い雰囲気を物語っている。
来週7月8日からは、マツダスタジアム首位阪神との3連戦が待っている。
「タイガースは強いですからね。何とかしがみついていけるように、みんなで頑張っていきたい」という新井監督の言葉に、カープの現在地が表れている。
でも、この東京ドームでの逆転劇を見れば分かるだろう。カープには、まだまだ隠された力がある。選手の入れ替えするんじゃないのかな!?
中村奨成のホームランで41イニングぶりの得点、菊池涼介の逆転タイムリー。この2つのドラマが示したのは、カープの底力だ。
苦しい時こそ真価を発揮する、それがカープらしさなんだ。貧打がどうした!
阪神戦でも、きっとカープファンを驚かせてくれるはずだ。東京ドームで見せた粘り強さと爆発力を、今度はマツダスタジアムで披露してほしい。
たとえ阪神3連戦で期待通りにならなくても希望を捨てるな。
決戦はお盆のピースナイターあたりだ。
貧打でも勝った。
きょうの勝利は、大きな意味を持っているはずだ!