
本年もありがとうございました。
2025年シーズンが終わり、カープのあまりにも情けない成績に、このブログの更新も滞り勝ちになってしまいました。
何十年もカープファンをやっていると、シーズン終了後には心折れ打ちひしがれるも、年が明け新人が入寮し春季キャンプが始まるとまたまたワクワクして夢見てしまう。そんなことを繰り返してきました。
2026年シーズン、2025年の中村奨成覚醒に続いて、田村俊介の覚醒を期待せずにはいられないわけですよ!
懲りないカープファン。いいじゃないの、それで幸せなんだから。
ところで常廣は大学卒業できたんだろうか?
4年目の苦しみ 打てなかった140打席
2021年ドラフト4位。愛工大名電で投打二刀流として注目を集めた逸材は、カープファンの期待を一身に背負ってプロの世界に飛び込んだ。だけどね、野球の神様は簡単には微笑んでくれなかったんだよ。
2023年のデビュー時は違った。わずか22打数で打率.364、OPS.818という鮮烈な数字を残し、「来た来た、カープの新しい主砲が」とファンを湧かせた。あの頃の田村は、バットを振るたびに何かが起こりそうな予感を漂わせていた。期待は膨らむ一方だった。
しかし、2024年は暗転した。侍ジャパンに選出され、開幕スタメンという大舞台を任されたものの、打率.198、本塁打はゼロ。
カープファンが描いた未来予想図は、現実の壁にぶつかって砕け散った。2軍に降りても打率.219。いったい何が足りないのか。田村本人が一番わかっていたはずだ。
2025年、状況はさらに厳しくなった。ファビアンと中村奨成が外野の主軸を担い、末包、秋山、野間といった実力者たちがズラリ。おまけにドラフト1位で獲得した平川も外野手ときた。「こんなに外野手がいて、どうやってレギュラーを掴めばいいんだ」と嘆きたくなる気持ちもわかる。
折れた指 高熱 それでもバットを握り続けた
2月のキャンプ。田村が左手中指を骨折していた。普通なら数週間は安静にすべき怪我だった。だけど彼は、トレーナーに頭を下げて、数日後には練習に復帰した。「レギュラー取りの好機を逃したくない」という一心で。
3月のオープン戦では39度の高熱を出した。それでも田村は、熱が下がるとすぐにグラウンドに戻ってきた。ガツガツと前に出る姿勢。新井監督が求める「気合と根性」を、体現しようとしていた。
開幕スタメンは逃した。それでも腐らなかった。4月4日、今季初先発のチャンスを得ると、ヘッドスライディングで決勝のタイムリーをもぎ取った。
土にまみれながらベースに滑り込む姿に、「この若者、本気だな」と感じたカープファンも多かったんじゃないだろうか。
そして翌日、2025年4月5日。運命の夜がやってくる。
延長11回 右中間へ飛び込んだ未来への一打
7対7の同点。カープは9回に4点差を逆転されながら、その裏に追いつくという激しい展開を繰り広げていた。延長11回、先頭打者として代打を告げられた田村は、DeNAの守護神・山崎康晃と対峙した。
初球。145キロの真っすぐが真ん中高めに来た。
「こういう軌道かなって描いた通りにきた」
迷いはなかった。バットを振り抜くと、カキーンという乾いた音がマツダに響いた。
打球は、まるで田村のこれまでの苦しみを全て吹き飛ばすかのように、右中間スタンドへ一直線。カープファンが待つ最前列に飛び込んだ。
両手を高く上げてダイヤモンドを駆け抜ける田村。ホームベースには、新井監督と仲間たちが満面の笑みで待っていた。
ウォーターシャワーを浴びせられ、新井監督と熱い抱擁を交わす。監督は後に「喜びすぎて頭が痛い」と語ったほど、無我夢中で喜んだ。
プロ初本塁打が代打サヨナラ本塁打。これは球団史上初の快挙だった。史上43人目という記録は、カープでは佐々岡監督が1990年に達成して以来、実に35年ぶりのことだった。
140打席かかって、ようやく訪れたプロ1号。それが、こんな劇的な形で生まれるなんて、野球の神様も粋な演出をするもんだ。
お立ち台に上がった田村は、興奮冷めやらぬ様子でマイクを握った。
「なかなか打てなかったので…お待たせしました!」
「いや〜もう本当にヤバいです!」
叫ぶような口調。カープファンも「よく頑張ったな」と涙ぐんだ人もいたんじゃないだろうか。
たった1本の本塁打に、4年間の苦労と葛藤が詰まっていた。
カープの未来を背負う22歳
きょうの田村を見ていて思ったんだよ。このカープには、まだまだ伸びしろを持った若い選手がいるんだって。178センチ、97キロの体格。左打ちの長距離砲。25試合で打率.254、1本塁打、4打点という数字は、確かに物足りない。2軍でも打率.219と苦戦している。
でもね、数字だけじゃ測れないものがある。骨折した指を押して練習に戻る執念。高熱を押してグラウンドに立つ根性。
ヘッドスライディングで泥まみれになる気概。そして、140打席目にして訪れたチャンスを、確実にモノにする勝負強さ。
「あの場面で打てたというのは、これからの自分にも強みとしてつなげていける」
田村はこう語った。サヨナラ本塁打という経験は、間違いなく彼を一回り大きく成長させるはずだ。2026年シーズン、外野のポジション争いは熾烈を極める。ファビアン、中村奨成、末包、秋山、野間、そして平川。錚々たる面々の中で、田村がどれだけ食い込めるかは未知数だ。
それでも信じたい。あのサヨナラ本塁打を打った田村なら、必ず道を切り開いてくれると。
カープファンが待ちに待った「主砲」への第一歩を、確かに踏み出したんだから。
2023年のデビュー時に見せた打率.364の輝き。あの才能が本物なら、きっと花開く日が来る。
折れた指も、高熱も、打てない日々も、全てが田村を強くするための試練だったんだと、いつか笑って振り返れる日が来るはずだ。
22歳の若武者は、まだまだこれからだ。「お待たせしました!」という叫びは、カープファンへの約束でもあった。
次は2本目、3本目と本塁打を重ね、いつかカープの4番を任される日が来るかもしれない。
そんな妄想を抱かせてくれる、希望に満ちた一発だった。
マツダスタジアムに響いた田村の絶叫。
あの声がカープの未来を明るく照らしている。
田村俊介を信じる!良いお年を

